KOR-ONE × SHINNOSUKE (MUNILABO) インタビュー


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KOR-ONE × SHINNOSUKE (MUNILABO) インタビュー

■イントロダクション

KOR-ONEとSHINNOSUKEの2人はこの夏、彼らのDIYスピリットの集大成とも言うべきミニ・アルバム「LAB EP」を発表した。AKAI MPC2000XLとレコード、紙とプラスティック、そしてアクリル絵具をまとった無数のスタンプ。これらがその主な材料である。ここでは、「LAB EP」のパッケージが完成を迎えた、まさにその当日のインタビューをお届けしたい。

■インタビュー

— さてさて、アルバム完成の祝杯をあげつつ、始めましょうか。まずはKOR-ONEさんから、これまでのキャリアを教えてください。
KOR-ONE(以下K):もう10年ぐらい、KOR-1 / KOR-ONEという名前で音楽をやってきたんだけど、「Midnight Theme」っていうパーティーを青山faiでやりだしたのが始まりで、その後は渋谷The Room、渋谷City Country Cityに移りながら続けてた。音源としては小林径さんがReadymadeからメガミックスCDを出したときに、スクラッチで参加したのが最初のレコーディング。同じ頃「Midnight Theme」のDJ Shorgeとミックステープを作ってDMRに卸したり・・・ってこんな感じで続けちゃっていいのかな。

— どうぞどうぞ。
K:当時はほとんどヒップホップの世界には関わってなかったんだけど、ビートは作ってて。高校の同級生だった、なのるなもないが自分のビートを使いたいって言ってくれたことがきっかけで、TempleATSで活動するようになったんだよね。ちょうど降神が始まる頃の話。

— そうだったんですね。
K:彼らと付き合うのがすごく面白くて、降神と、志人・なのるなもないのソロ作品にもビートを提供することになって。それからはMemoryStorm(DJ PSI KICKとのブレイクビーツ・ユニット)でリリースしたり、降神のライブDJをやったり、ミックスCDをいくつか出したり。で、去年までライブとDJを中心に活動してきたけど、それが色々一段落したから、今までMPCで作ってきた音源をまとめることにしようと思って。

— 一方、SHINNOSUKEさんがデザイナーとしてシーンに関わりだしたのはどこからなんでしょう。
SHINNOSUKE(以下S):金沢美術工芸大学時代の先輩に清田弘くんがいて、東京に出てきてからは彼のやってるFUTURE DAZEっていうアートと音楽のグループを中心に、色んな人と仲良くなったんだよね。そこから縁があってTempleATS作品のジャケットとか、KOCHITORA HAGURETIC EMCEE'Sの1stアルバムのアーティスト写真を撮ったり、弘くんと一緒にデザインをさせてもらったりしてて。

— KOR-ONEさんとの接点は?
S:なのるなもない君のアルバムのリリース・パーティーに遊びに行った時、なぜか一緒に話すことがあって。2005年ぐらいかな。
K:当時、高円寺ぱちか村でやってた「Twende Safari」とか、中野Heavysick ZEROの「Bed Making」とか、俺の周りのパーティーのフライヤーをいくつかSHINNOSUKEが担当してたよね。不思議な感じのデザインで、面白いなって思ってたんだよね。

— なるほど、あの界隈の濃い磁場のなかで、自然と吸い寄せられた感じなんですね。でも、2人でがっちり組んで制作するのは初めてになると思うんですが。
S:最初はリリースに向けて「KOR-ONE」のロゴマークを作ろうっていう話からだったよね。
K:そうそう、ビート聴いてもらって。でも、家に来て話してたらジャケットやポスター、アートワークも含めてやりたい事を提案してくれたんだよね。ここまで加担してくれるんならフィフティ・フィフティで出したいなと。
S:カオリ君(KOR-ONE)のDJはすごく好きだったし尊敬してたから、嬉しいオファーだったのね。だから熱くなって色々考えてみたんだけど。

— 結果、ビジュアル面はかなりの部分SHINNOSUKEさんのアイデアが元になってますよね。
S:やっぱり今回はMPCで打ち込んでるっていうことで、ロゴの段階から「手」を大事にしたいっていう方向性があって。こんな風にアルバムまるごとデザインに関わるのは初めての経験だったけど。

— MUNILABOっていう名前も結構早い段階から?
K:出すにあたって、レーベル名というか屋号を付けようっていう話になったんだよね。今回ジャケットのために準備したスタンプを色々試しに押してたんだけど、たまたま数字の「62」が並んだ時に閃いた。
S:後付けなんだけど、「無二」っていいねって。

— アーティスト写真もちょっと異色で、二人の手形っていうまさに「無二」なものだし、ジャケットも1枚1枚違っているし。個人的には、ラテン語の「mani」つまり「hands」を連想させる部分もあって絶妙だなと思いました。
S:それはすばらしい。

— 手でモノを作り出すっていうことへのこだわりを、もうすこし話してもらえますか。
K:これまでMPCだけで作るっていうスタイルを選んでやってきたわけだけど、サンプリングっていうのは切り貼りの世界なんだよね。音楽を作っている感覚と同時に、それとは別の、切ったり貼ったりっていう感覚があって。そこに自分の想定していない、コントロールしていない音や情報が混じってるのが面白いところかな。単にループさせてビート足してっていうだけじゃない音響的な世界がある。

— KOR-ONEさんだから成り立つ「手作り」なのかなと。
K:俺の場合はレコードに針を落とす、取り込む、パッドを叩いて並べていく・・・っていう作業が全
て手を通した動作という意識があって、それが手作りにつながってると思う。

— 自分と道具の間の肌身の感覚みたいなところから、生まれるものがあるんでしょうね。
S:俺も、もともと手書きを活かしたデザインはよくやっていたんだよね。手で書いた線の微妙なゆらぎが持ってる気持ち良さだったり、温かみ、親近感っていうのが良いなと思ってて。でも、今回のプロジェクトでスタンプを全体的に使ったのはすごく新鮮だったかな。ハンドサインで「LAB EP」のアルファベットを表してみようってことで、早速スタンプを作ってみたのがこのジャケットになった。

— 2人のアイデアがどんどんかみ合っていく感じ、良いですね。
S:常にミックスだよね。
K:でもコンセプトがブレないのが良かったね。中に入ってるポスターのレタリングも良い感じになったし。
S:1枚1枚、色ムラや版ズレが楽しめるレトロ印刷でプリントしてます。

— 一つの作品にここまで手をかけていくっていうのは、日本ではなかなかレアなケースじゃないですか。むしろ海外の一部のインディー・ヒップホップ・レーベルに通じるものを感じます。マイアミのBeta Bodegaの精緻なステンシル・ジャケットだったり、Stones Throwが時折みせるパッケージへのこだわりだったり。
K:特に意識してたわけではないんだけどね。

— 難しい質問かも知れないですけど、自分の中で重要なトラックを挙げてください。
K:8曲目の“Shakou”かな。音楽を作る時って、頭の中に風景が映るんだよね。映らない時はそこで止めて、残さないようにしてる。この“Shakou”は、夏の西日が部屋に差し込んでる風景がすぐに浮かんで、作っていけたんだよね・・・夕日っていうほどでもない、その手前の感じ。タブラのループを合わせて、懐かしい感じを持たせたりして。

— もともとビジュアルや映像と結びついた作り方なんですね。
K:そう。で、その風景の中で自分が思ってること、描きたいことっていうのが、メインループの上で展開するシーケンスになっていく。2曲目の“Midnight Sun”もそういう意味ではお気に入りかな、いわゆる「白夜」のことなんだけど。世はまだ明けてないのに、太陽が先に昇ってる状態。思い悩んだ時って、悩めば悩むほど暗いけど、真っ暗になった先に光が見えてくるっていう・・・そんなイメージ。

— なるほど。
K:もちろん歌詞の無い音楽だから、映像的な具体性がそのまま含まれているわけじゃない。でも、例えば街を歩いてる時、移動してる時に聴いてもらえたら、目に映る世界が毎秒単位で変わっていくよね。その風景が音とシンクロする場所がどこかで見つかるはずだから、それを楽しんで欲しいなと思ってる。
S:あ、まさにそういう聴き方してた!銀座を歩いてる時だったんだけど。都市も木々もあるような風景にすごくシンクロしたんだよね。ドライブや、自分の足で散歩してるときにすごく良いと思ってる。“Sheep in the Forest”とかね。

— 聴く人たちの生活に、すっと入り込んでいくような作品になりそうです。
S:ジャケットのカラーリングもそう。いろんな人に手に取ってもらえたらいいなと思って、かなり幅を持たせてみたんだよね。迷彩っぽいグリーンのやつとか、原色を沢山つかったやつとか・・・。

— ほんとに1枚1枚選べるので、お客さんにはぜひ店頭で悩んでほしいですね。
K:うん。その時点で、受け手は受け手では居られなくなるわけだよね。主体的にならざるを得ない。今回は一貫して「楽しめることをやろう」と思って作業してたんだけど、実はそれがあって初めてモノづくりの良さっていうのが伝わるんじゃないかなって思ってる。

— 作り手が本気で楽しんでるからこそ、受け手もそこに入っていける。
S:そうそう。

— 最後に、今後の計画や野望を教えてください。
K:MPCだけで作る音楽にはもう自分の中で満足していて、今回で一つの区切りになったかなと思ってる。今は制作環境も色々変えているところで、手の届かなかった音の世界をこれから意図的に取り込んでいきたいなと。あと、他の人と一緒に作るっていうのは今後もやりたいな。自分が想定してないことが沢山でてくるのが一番楽しいし、可能性を感じるから。

— さっきサンプリングの面白さの話がありましたけど、一つ次元が上がって、他の人から不確定要素を取り込むようになっていくわけですね。
K:そうだね。それをもっとシンプルに、もっと特化して追求してみたい。その母体としてMUNILABOを作ることができて嬉しいな。

— SHINNOSUKEさんはどうですか。
S:・・・一番作りたいのは、子供。愛する人とともに、子育てしてみたい。

— なるほど・・・ある意味、今の時代に一番大事なクリエイションですね。
S:そのためには健康的な生活を送って、その中でデザイナーとして仕事していきたいなと。
K:大事だよねえ。

— 良いまとめになったところで締めますか。リリース・パーティーの準備もしないと・・・(笑)。

interview & text : Yuichi Ishikuro (enjeu riddims press)
2011.05.28

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by sibitt | 2011-08-04 15:27 | TempleATS SHOP NEWS | Comments(0)
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